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室蘭民報

旧室蘭駅舎など「炭鉄港」が日本遺産、歴史観光に弾み【室蘭】

日本遺産に認定された日本製鋼所室蘭製作所の旧火力発電所

 文化庁が20日、2019年度日本遺産に認定した「本邦国策を北海道に観よ!~北の産業革命『炭鉄港(たんてつこう)』~」は、歴史的に産業分野のつながりがある室蘭と空知、小樽の3地域を結び、観光の新たな動きを創出する可能性もある。かつて炭鉱で栄えた空知、製鉄所で石炭を利用した室蘭、石炭の積み出し港だった小樽と室蘭。そして、これらを結ぶ鉄道や構成文化財のある8市4町が関わっている。胆振管内自治体の認定は初めて。

 文化庁が15年度から始めた日本遺産は「地域の歴史的魅力や特色を通じて我が国の文化・伝統を語るストーリー」を認定し、ストーリーを語る上で不可欠な魅力ある文化財群を総合的に活用する取り組みを支援する内容。既存の文化財の価値付けや保全のための新たな規制を図ることを目的としたものではなく、地域に点在する遺産を「面」として活用し、発信することで地域活性化を目的としている点が特徴だ。

 道内関連の日本遺産は「ニシンの繁栄が息づく町」(桧山管内江差町)、「北前船寄港地・船主集落」(函館市など道内3市1町を含む全国38市町)、「大雪山のふところに伝承される神々の世界」(上川管内上川町など2市10町)に次いで4件目となる。

 ストーリーを構成する文化財は日本製鋼所の旧火力発電所、瑞泉閣など。今後、ポータルサイトなどで3地域のPR活動を展開し、室蘭市でも工場夜景や海岸町の旧室蘭駅舎、緑町の旧三菱合資会社室蘭出張所といった産業景観の周遊ルートの設定に着手して地域振興を図る方針だ。

 ▽鈴木直道知事の話
 「地域の皆さまがこれまで以上に活発な活動を展開し、地域の価値を再認識されることにより、さらなる文化、観光の振興につなげられることを期待します。道としても、歴史的・文化的資源の魅力を国内外に広く発信するとともに、それぞれの地域の魅力を高める取り組みを全力で支えていきたい」

 ▽青山剛室蘭市長の話
 「今年、日本遺産の構成文化財である旧室蘭駅舎に隣接して蒸気機関車D51を移設する予定で、その同じ年に炭鉄港が日本遺産に認定されたことはうれしく思います。炭鉄港を貴重な文化資産、観光資源と捉えて広域的な連携を図ってまいります」

 ▽栗林和徳室蘭商工会議所会頭の話
 「空知地域、室蘭、小樽の行政や経済団体、市民団体などが官民の垣根を越えて共に手を携えて取り組んできた結果であり、大変喜ばしく感じております。今後は旧室蘭駅舎の隣に蒸気機関車を移設するなど周辺環境整備も予定されており、さらに観光資源としてブラッシュアップを図るとともに市民をはじめ、多くの方に先人の歴史を知る機会にしてまいりたい」

「炭鉄港」日本遺産認定、期待と喜びの関係者

日本遺産に認定された室蘭市内の構成文化財、旧室蘭駅舎、瑞泉閣、旧三菱合資会社室蘭出張所(左から時計回りに)

 北の産業革命「炭鉄港」が日本遺産に認定されたことを受け、室蘭の関係者からも歴史的・文化的資源の魅力を通した地域の観光振興に期待する声や喜びの声が聞かれた。

 今回認定された構成文化財の一つ、旧室蘭駅舎内に事務所を構える室蘭観光協会の仲嶋憲一事務局長は、これまで炭鉄港推進協議会に参加してきた。「これまであまり脚光を浴びてこなかった室蘭発展のベースとなった歴史が日本遺産に認定された。7月の撮りフェスや歴史的建造物を訪ねる町歩きでも積極的に取り入れていきたい。また秋には駅舎の隣にSLもやってくるのに合わせ、駅舎内の資料にも炭鉄港を盛り込み、一層充実させていきたい」と喜んだ。

 北海道炭鉄港市町村議員連盟副会長を務める室蘭市議会の南川達彦議員は「炭鉄港の歴史が、日本近代化の礎になった大事な歴史として評価されたと受け止めている。戦後復興、高度成長期の中での大事な部分で、関わりが深い北海道にとっても意義深い認定。歴史的な価値を認識するきっかけになれば。今後は炭鉄港の中で担ってきた役割を、地域の歴史として大切にしていくことが重要で、次世代を担う子どもたちに広く伝えていくべき。炭鉄港に関連する3地域での相互交流にも期待している。修学旅行での交流なども可能性の一つ」と意気込みを語った。

   

 明治時代、空知炭鉱、夕張炭鉱の開発から室蘭に鉄道が開通。室蘭港は石炭の積み出し港として発展した。石炭、地場の砂鉄の産出もあり、製鋼、製鉄事業が興り、鉄のまちにつながった歴史がある。

 日本製鋼所室蘭製作所には、1909年(明治42年)の工場設立当時に整備された旧火力発電所、大正天皇が皇太子時代に同所を訪問することになり11年に建てられた瑞泉閣、同所で18年に製作された国産初の航空機用エンジン「室0号」が今も残り、構成文化財に選ばれた。

 同室蘭製作所は「社の歴史を物語る三つの施設や機械の価値が認められ光栄。いずれも100年を超える時を経たもので、先人の努力のたまもの。今後大切に残し産業発展に寄与していきたい」考えだ。

 一方、室蘭の製鉄は09年、北海道炭礦汽船の製鉄場(現日本製鉄室蘭製鉄所)の第1溶鉱炉の火入れが行われた。砂鉄と鉄鉱の混合による国内最初の精錬の始まりで、初出銑の成功を記念して製作された恵比寿・大黒像が今回文化財に選ばれた。今も室蘭製鉄所などに保存されている。

 同室蘭製鉄所は「製鉄所の創業110周年の節目となる今年、まさにその創業時に作られた大黒像が炭鉄港を構成する一つとして認定されたことは感慨深い」としている。

 むろらん100年建造物保存活用会の村田正望代表理事はかつて旧三菱合資会社室蘭出張所の保存活動に尽力してきた。「旧三菱建屋は取り壊されなかったことによって国に認められる価値になった。ビジョンなき、資産の取り潰(つぶ)しはまちの未来を危うくする。いま、北海道全体の衰退をいかに防ぐかは室蘭の将来にとっても大切。炭鉄港は、破綻しそうな空知の自治体や、人口減の小樽、室蘭に歴史を軸にした観光という若者の職につながる要素を持つための最後のツールなのかもしれない」と述べた。

旧室蘭駅舎を拠点化の考え

 室蘭市の青山剛市長は20日、炭鉄港の日本遺産認定を受け、SLのD51が移設展示される海岸町の旧室蘭駅舎を、炭鉄港の歴史の発信拠点にする考えを明らかにした。市は2019年度当初予算にSLの展示関連で100万円を計上しており、この中で炭鉄港の歴史を紹介する手法などについても検討を進めていく。青山市長は「歴史を知るきっかけになれば」と話している。

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