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「燃えよ剣」に影響 子母澤寛と司馬遼太郎「新選組」小説の系譜【函館】

「新選組関係者らから膝詰めで話を聞いた子母澤の聞き書きは大変貴重」と話す丹羽館長

 新選組の土方歳三を主人公とした映画「燃えよ剣」が15日に公開となる。原作は司馬遼太郎(1923~96年)で、作品には函館ゆかりの作家、子母澤寛(1892~1968年)が昭和初期に書いた「新選組始末記」が大きな影響を与えた。子母澤研究家の函館市中央図書館、丹羽秀人館長は「始末記は土方の死で終わる滅亡までを追い掛け、新選組を網羅的に捉えた初めての作品。新選組を全国区とするインパクトがあった」と話している。

 「燃えよ剣」は1962年からの週刊誌連載後、64年に出版。司馬は同時期に「新選組血風録」も書いた。箱館戦争で死地を求める土方を描き、出版から半世紀を経過しても〝土方の代表作〟と言える一冊だ。

 子母澤(本名・梅谷松太郎)の母は函館出身。旧幕府軍として箱館戦争にも従軍後、旧厚田村(現石狩市)に落ち着いた祖父、梅谷十次郎から昔話を聞きながら育った。1907(明治40)年には函館商業学校(現函館商業高)に入学(同8月の函館大火の影響で中退)。この間、函館で過ごした祖父は箱館戦争の跡地を訪ね歩いたという。 

 新聞記者となった子母澤は東京日日新聞(現毎日新聞)時代の27(昭和2)年に戊辰戦争60周年記念の連載「戊辰物語」を担当。取材余話を持って28(同3)年に作家デビュー作「新選組始末記」を発表すると大ベストセラーとなり、31(同6)年までに「新選組遺聞」「新選組物語」と続いた。

 昭和初期には幕末の動乱も過去となり、歴史に埋もれかけていた新選組に光を当てた。子母澤は大正時代から隊士の生き残りら関係者を訪ね歩いて直接話を聞いていたことが執筆の揺るがない土台となり、史実を織り交ぜた3部作はその後の作品にも大きな影響を与え続け、その一つが「燃えよ剣」となった。

 司馬にとっても子母澤作品は大きな壁で、子母澤に直接会って教えを受けたという。67年の両者の対談で司馬は「子母澤先生の『新選組始末記』がどうしても越えられない。(中略)非常に鮮やかな驚きを覚えました」(子母澤寛全集25、講談社)と賛辞を送り、子母澤も聞き取りをした当時の様子を語っている。丹羽館長は「子母澤の始末記には特定の主人公はいないが、全体を通すと近藤勇。司馬は違いを出すために土方を主役にしたのだろう。土方が好きだったこともあるのでしょう」とする。

 子母澤は最晩年にも箱館戦争と榎本武揚の群像劇「行きゆきて峠あり」で土方の死を描いた。石狩市民図書館勤務時に子母澤に関心を持ち、ゆかりの函館でも思いを深める丹羽館長は「来年が生誕130周年。ゆかりのある各地で子母澤のことが語られることが楽しみです」と話している。

 映画「燃えよ剣」は土方を岡田准一さんが演じ、「クライマーズ・ハイ」(横山秀夫著)や「日本のいちばん長い日」(半藤一利著)などの映画化で知られる原田眞人監督作品。函館ではシネマ太陽函館で上映。

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