【日高】新ひだか、新冠、日高の３町で構成するひだか漁協（本所・新ひだか町、石井善広代表理事組合長）が、日高町緑町に建設を進めていた「ひだか漁協水産物冷凍加工施設」が昨年12月30日完成し、１月26日に同施設で関係者のみの竣工式を行った。

　本来は日高振興局、各関係町長をはじめとした多数の来賓を招いて盛大に行う竣工式だったが、新型コロナウイルスの感染増加で同組合や建設会社関係者のみで執り行った。出席者は漁協関係者10人と建設関係者15人の計25人。

　平取町の義経神社の神主が施設の無事完成を報告し、感謝する神事を行った後、石井代表理事組合長が、「日高の海を取り巻く状況は、地球温暖化などによる『水産資源の変化』や『消費者の食文化の変化』、『高齢化による担い手不足』による地域水産業の低迷が続き、漁民の生活は大変厳しい状況にある。本施設は防衛省の補助事業『静内対空射撃場周辺漁業用施設整備助成事業』と日高町の補助を受け、大型冷凍保管倉庫と高度衛生管理設備を導入した最新の加工施設」。

　「『安心・安全』な魚介類を全国へ発信、さらに付加価値を付けることで、新たな『日高漁協ブランド』を確立し、地域水産業の活性に貢献できる施設の竣工式を迎えることができた。これをきっかけに地域水産業の活性化と地場産鮮魚の付加価値向上を目指していく」とあいさつした。

　その後、監理した中山設計事務所の藤原昇悟代表取締役、施工した岩田地崎建設の岩田幸治取締役副社長執行役員北海道本店長、磯田組の磯田洋一代表取締役社長に感謝状を贈呈した。

　施設は、国道２３５号から山側に約７００㍍の緑町１３０に新築。敷地１万８０６５・63平方㍍を町から取得し、建築面積４６５４・20平方㍍。構造は、鉄骨造平屋建て、付属建物１は一部鉄筋コンクリート造２階建て。

　工事は、岩田地崎・磯田組特定建設工事共同企業体が受注。工期は２０１９年12月27日から21年12月30日までで、工事費は26億４６２万６０００円（税込）。内部は、冷凍倉庫棟、一般鮮魚加工棟、サケ加工棟、タコ加工棟と付属建物１、２からなる。

　これまで同漁協管内では、大型の冷凍庫施設や１日に大量の鮮魚を加工できる業者がなく、漁業者が水揚げした鮮魚が大量になると、管外の大型の加工場などに運賃をかけて出荷することになっていた。また、冷凍庫での貯蔵による出荷調整に対応できない現状から、魚価はその日の水揚げされる量に大きく左右される現状もあった。

　漁業者が水揚げしてきた物を荷捌所で入札し、地元の仲買人に販売することには限界があり、また、近年の消費者が求める衛生管理の行き届いた「安心・安全」な食の提供をするための施設・機器などの更新ができず、廃業・解散となった地元加工業者も多い中、同漁協が冷凍加工施設を計画。同施設の運用により、これまでの漁業者と漁協が販売（１次）するだけの末端から、同漁協による加工（２次）、そして冷凍保管による出荷調整や販売（３次）により総合的な６次産業化の推進が期待されている。

　本格的な稼働は４月１日からで道内、道外へ出荷する。３月末までには食品衛生管理の国際基準「ＨＡＣＣＰ（ハサップ）」の取得が見込まれ、取得できれば中国、ベトナムへ出荷が可能になり、東南アジア、シンガポールなどにも販路拡大につなげる考えだという。

施設の無事完成を感謝する神事を行うひだか漁協関係者ら