皮膚科院長大石さん治療発展に貢献 論文引用され100回超【音更】
とかち皮膚科(音更町木野西通16)の大石雅樹院長(56)が、1994年に執筆した大学院修了論文が、さまざまな医学雑誌などに引用され、このほど、被引用件数(引用された件数)が100本を超えた。被引用件数が3桁になるのは珍しいという。大石院長は「本当の基礎段階の論文で、その研究を生かしていただいている形」と話す。
帯広出身の大石院長は、帯広柏葉高から札幌医大に進み、卒業後、同大皮膚科学講座入局と同時に大学院に進学。1994年の大学院修了の際に執筆した英語論文が、同年のドイツの皮膚科分野専門誌に掲載された。今年5月までの被引用件数は106本を数える。
論文の題名は、「ヒト表皮角化細胞ならびに扁平上皮がん細胞株におけるアポトーシス調節因子Fasの発現分布と抗Fas抗体の効果について」。個体組織の成長過程では、増える細胞と同時に役目を終えて死ぬ細胞もある。大石院長は、この死ぬ過程(アポトーシス)が医学分野で注目され始めたことに着目した。
「皮膚科でいえば、皮膚があかとなって落ちることもアポトーシス」(大石院長)とする考えに基づき、国内の学者がアポトーシスを誘導する抗体を作ることに成功したことも踏まえ、この抗体を皮膚科に応用した研究などをまとめた。
被引用件数の内訳は、皮膚科学が36.1%と最も多く、皮膚科学と免疫学、腫瘍学の3分野で55.6%と過半数を超える。さらに、眼科学や病理学などでも引用された。札医大医学部フロンティア医学研究所免疫制御医学部門の池上一平助教は、「幅広い分野で引用されている」と分析する。
また、論文発表後10年間で数多く引用されたほか、2010年以降も絶えず引用されていることから、池上助教は、「研究結果が正確で、現在の医学の基礎的な結果を示していることも分かる」と説明。「重症皮膚炎の発症メカニズムや皮膚がん病態への深い理解が得られ、現在の皮膚科学や免疫学、腫瘍学などの基盤になっている」とする。
大石院長は「研究生活は大変なことも多かったが、有意義だった。日々の診療に、研究者としての視点を持って取り組むことができるようになったことは、人生最大の収穫」とも話す。
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