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苫小牧民報

入居者ら、シソ摘みしのぶ 思い出のジュース受け継ぐ-介護職員・中村さん、地震の犠牲に

中村さんが大事に育てたアカジソの葉をそっと摘み取る高齢者ら=21日

 6日未明に起きた胆振東部地震により、震度7の揺れに見舞われた厚真町内の高齢者グループホーム「やわらぎ」で21日、敷地内の畑で育ったアカジソの葉が収穫された。地震の犠牲になった介護職員中村百合子さん(65)が生前、ジュースにして入所者に飲んでもらおうと丹精込めて育て上げたもの。職員らがその意志を受け継いでジュースを作って入所者に振る舞い、中村さんをしのんだ。

 「ちょうどいい味でおいしい。いつもと一緒だね」。21日午後、やわらぎのリビングに集まった高齢者がワイン色のシソジュースをコップで味わいながら、口々に話した。

 甘みと酸味のバランスが取れたシソジュースは、同施設の夏の定番。レシピは中村さんが考えた。糖尿病を患う高齢者を気遣い、糖分は抑え気味で、甘さ控えめの優しい味わい。砂糖とクエン酸の絶妙な配分がおいしさの決め手だ。

 中村さんは4~5年前から敷地内の畑でシソを栽培し、ジュースにして高齢者に振る舞ってきた。同じく今回の地震で亡くなった夫の初雄さん(67)が農家だったので、野菜や果物作りはお手のもの。敷地内の約1000平方メートルの畑でトマトやカボチャをはじめ、さまざまな農作物を入所者と共に育て、収穫してきた。

 今年はシソの葉を6日午後に摘み取る予定だったが、同日未明に起きた大地震でそれどころではなくなった。加えて中村さん一家の不慮の死。施設長の加藤恒光さん(68)は「故人が育てていた大切なものなので、いつ収穫するか迷っていた」と振り返る。

 柔らかい日差しを感じた21日の朝、入所者と一緒にシソの葉を摘み取る決心がついた。同日午後に職員と入所者ら計7人が、畑の高さ50~60センチの茎に付いた葉を一枚一枚手で収穫。籠は約900グラムの葉でいっぱいになった。

 台所で丁寧に水洗いし、鍋いっぱいの水に入れ込み、煮出した。水は徐々に赤紫に色づく。シソの酸っぱい香りが室内に漂った。施設の介護福祉士、山下直樹さん(48)は「この香りで中村さんを思い出す」と言う。

 葉から色が抜け落ちたら、煮汁を2~3回こした。弱火でグラニュー糖とクエン酸を振り掛け、お玉で円を描きながら職員と入所者がゆっくりかき混ぜ、何度も味見しながら味を調えた。

 収穫から1時間ほどで鮮やかなワインレッドの原液が完成。職員が保存用のペットボトルに注いだ。施設では水と合わせて飲むためだ。氷を入れて飲むと、冷たくて甘みと酸味が調和したすっきりとした味わいに。高齢者たちに笑顔が広がった。

 加藤さんは「大事な人を亡くした。入所者に優しく、高齢者と共に一生懸命育ててくれた。中村さんの思いをシソジュースに託し、来年以降も続けたい」と話した。

高齢者に優しく接した生前の中村さん(右)=7月26日(厚真町社会福祉協議会提供)

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