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苫小牧民報

旧穂別村の電源開発資料見つかる 「斉藤征義の世界館」設立準備室

蔵書整理が進む「世界館」の設立準備室。デスクの傍らにあるのが「水力発電所設置計画書」

 苫小牧市内で年内開館が予定されている「斉藤征義の宮沢賢治と詩の世界館」の設立準備室(苫小牧市王子町1)で、旧穂別村(現むかわ町穂別)福山地区の水力発電所設置計画書が見つかった。1930年代に米国で進められた総合開発にならった「日本版TVA計画」に40年代、村独自で取り組もうとしたことが分かる貴重な資料だ。

 計画書はB4判60ページで40年代後半に作成され、「穂別のTVA」というタイトルが付けられている。TVAとはテネシー川流域開発公社の略。同村が33年に米国で実施された公共事業を手本に鵡川流域で電源開発を進めようとしていたことがうかがえる。表紙は当時としては珍しいカラー印刷で、原本とみられる。

 端書きには当時第12代村長で、穂別電気利用農業協同組合の初代組合長だった横山正明さん(1909年~66年)が太字のゴシック体で「電気がほしい。冬の暴君から電気でまもり、800町歩の開田可能地へ電気揚水してみたい(中略)」とつづっている。

 「鵡川の渓流にたたずむ人はテネシー川の大ダムをまぶたに描いている」と、電源開発に懸ける思いを強調。「治水と発電と産業の開発、生活の確立は我々の自立と文化への出発であり、山奥の孤立と停滞から逃れて(略)一億の人口も狭い日本に住まい得る立体計画の一部を仕上げてみたい」としている。

 新穂別町史などによると、横山さんの村長就任から半年後の47年9月、村は大水害に見舞われ、橋や田畑が流失。村の一部に電気が届かなくなった。

 計画書は「世界館」の蔵書整理を進める過程で、穂別町関係の資料が入った段ボール箱の中から見つかった。

 斉藤さんは元同町職員で、宮沢賢治の研究者。村で電源開発事業に取り組んだ穂別電気利用農業協同組合の創立15周年記念誌(64年、B4判60ページ)のコピーや斉藤さんが穂別の発電所について寄稿した千歳の市民文芸誌「みなづき」21号(78年)も同時に見つかった。

 斉藤さんが手掛けた文芸誌の寄稿文は、「銀河にかかる発電所」と題した全20ページの随筆。穂別村に「賢治観音」を建立するほど賢治に心酔した横山さんが、賢治の「農民芸術概論綱要」にある窮民救済への思いも込めて防災と造田、無灯地区の解消を狙った発電所建設を構想したと記している。

 斉藤さんがこうした資料を所有していたことについて、同準備室事務局長の丸山伸也さん(67)は「賢治研究の一環で、斉藤さんは穂別という土地の潜在能力を調べていたのでは。世界館が開館した際には、他の資料と共に一般公開したい」と話す。

 同町史によると、同計画は52年に着工に至ったが、発電所に水を送るトンネルの掘削工事がもろく崩れやすい蛇紋岩のため難航した。計画変更などもあって、当初予算2億2600万円、工期3年の計画は総工費5億3600万円、工期7年と大きく膨らみ、その後の村財政破綻の主因となった。発電所は72年に北海道電力に売却後、取り壊された。

 ■メモ  斉藤征義(さいとう・まさよし) 1943年帯広市生まれの詩人。元新聞記者で旧穂別町役場にも勤務した。99年詩集「コスモス海岸」で北海道詩人協会賞。賢治研究の第一人者としても知られる。

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