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苫小牧民報

130匹を世話、常に赤字状態 苫小牧の市民団体「猫の隠れ里」

新しい飼い主が見つかるその日まで、ボランティアスタッフに世話をされながらシェルターで暮らす猫

 「ミミちゃん調子はどう? 風邪は良くなったかな」「クルクルちゃんとクララちゃんはいつも仲良しね」「ミニパトちゃん、そんなに怒らないで。大丈夫だからね」

 女性が声を掛けながら、ケージの中を掃除する。ペット用トイレの砂をスコップでかき回し、尿やふんで固まった砂を取り除く。作業に当たる女性にすり寄り甘えたり、「シャー」と威嚇しながら前足でパンチを繰り出したり。「この子はここで長い間暮らしているんだけど、いまだに心を開いてくれないの。本当はかわいい子なのに」

 苫小牧市東開町の住宅地に建つ2階建ての一軒家。一見ごく普通の住宅だが、ここに住むのは猫。ボランティア団体「猫の隠れ里」が運営するシェルター施設だ。飼い主の事情で行き場所を失ったり、市内や近郊の保健所から引き取って保護した約80匹が暮らす。

 取材を始めた5月中旬、シェルターを訪ねると、同団体の2人の女性メンバーが1階と2階を何度も行き来しながら猫の世話をしていた。1匹、2匹であれば、あっという間に終わる作業だが、ここでは餌や水の交換、トイレ掃除など必要最小限の世話をするだけで精いっぱい。この日も午前10時ごろから作業を始めた2人が、ようやく昼食を取ったのは午後3時近くになってからだった。

 構ってもらえる時を待っていたのだろうか。女性メンバーが腰を下ろすと、1匹の猫がすかさず膝にひょいと乗ってきた。「本当はもっと、それぞれ時間をかけて接してあげたい。そうすれば、今は人が嫌いな子も少しずつ人に慣れて、新しい飼い主が見つかるかもしれないのに」。女性メンバーは、もどかしい思いをのみ込むかのように食事を口に押し込み、また慌ただしく猫の世話に戻っていった。

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 団体の代表を務める藤田藍さん(36)が保護活動を始めたのは、今から6年ほど前だ。最初は個人的な活動だったが、猫の数はどんどん増えてシェルターを構えるほどに。今ではシェルターと藤田さんの自宅を合わせ、130匹を数える。

 5、6月は出産シーズンのため、飼い主のいない野良猫が産んだ子猫の保護依頼が急増する。藤田さんが自宅で預かり、3時間置きに授乳する。授乳の合間を縫ってシェルターを訪れた藤田さんの顔には、疲労の跡がくっきり刻まれていた。「何日もまともに寝ていないので、さすがに体がきついですね」。そう言って座り込んだ途端、携帯電話が鳴った。屋外で母猫がいない子猫を保護したという人からの連絡だ。

 しばらくして籠に入れられた子猫が数匹、シェルターに持ち込まれた。「ミイー、ミイー」と小さな鳴き声を上げる姿を目に、「生後1週間というところでしょうね。よく太っているし、大丈夫かな」。藤田さんはひょいと抱き上げ、少し安心した表情を浮かべた。

 だが、人の手で子猫を育てることは容易ではない。藤田さんから数日後、すべて死んだという残念な知らせを受けた。「手を尽くしても亡くなってしまうことも多い。特に子猫は体調を崩したら、あっという間に死んでしまう。命を預かる責任の重さに全てを投げ出したくなる時もあるけど、猫の幸せのために踏ん張っています」。藤田さんは、自分に言い聞かせるようにそう言った。

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 団体では基本的に、保健所からの引き取り以外、依頼者から餌代などの費用を負担してもらっている。しかし、130匹もの猫が食べる餌やトイレ砂などを買うには、依頼者の費用負担だけでは足りず、常に赤字状態。シェルターでの世話もボランティアのメンバー10人ほどが交代で当たっているが、十分な人数ではない。毎日が綱渡り状態だ。

 保護した猫を新しい飼い主へ譲渡しているが、引き取ってくれる人はそう多くはない。つらい活動だが、それでも猫の命を守りたいという熱意が背中を押す。

 藤田さんは5月下旬、飼っている猫が子を産んで10匹以上に増えてしまったという高齢女性の自宅を訪ねた。この高齢女性の身内から、増え過ぎた猫を保護してほしいとの依頼を受けたからだ。記者も同行し、藤田さんが猫を引き取ろうとした際、高齢女性から「何であなたはこんなことをしているの?」との言葉を掛けられた。「猫が好きだから」。答えは明快だった。

 誰よりも猫を愛し、命の重さを実感している。だからこそ、命を粗末にする人間の身勝手な行為には憤りを覚えるという。「聞いてください。高丘の動物火葬場に生きたままの子猫が段ボール箱に入れられ放置されていたんです」。先日、怒りで声を震わせた藤田さんからそんな連絡が入った。

 「どうしたら、命が軽んじられない世の中になるのでしょうか」。その問いに記者は何も答えられなかった。

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